住宅購入の必須知識・ノウハウ

【両手取引】仲介が1社だけの契約は危険?新築戸建やリノベ物件は特に注意

こんな方向けの記事です

  • 両手取引って何?取引に入る仲介会社の数がなぜ重要?
  • 両手取引では売買契約を結ぶまでスピードが速い理由は?
  • 新築戸建てやリノベ物件に押し売りが起きやすい理由は?

売主と買主の間に1社の仲介業者しか入らない取引を「両手取引」や「両手仲介」などと呼びます。

この両手取引は、危険な取引の温床となる場合があります。

ここでは、知らず知らずのうちに危険な取引に巻き込まれないよう、両手取引における注意すべきポイントを解説します。ぜひ安全に取引してください。

この記事を読むメリット

  • 両手取引になりやすい物件の種類が具体的に分かる
  • 仲介業者が儲かる仕組みと両手取引のリスクが分かる
  • 不動産会社が売主のケースの特別な注意点も分かる

 

【結論】両手仲介は儲けが2倍になる取引。だから強引な営業も起こる

売主と買主の間に1社しか仲介業者が入らない「両手取引」が危険な理由、結論から言えば「儲かる取引を成立させようと、仲介業者が契約を強く迫ってくるから」です。

順を追って説明すると以下の通りです。特に仲介業者間で競争が激しい新築戸建てやリノベ物件は要注意です。

  1. 両手取引になるのは、一部の個人所有物件とほとんどの業者売主物件
  2. 両手取引は報酬2倍で儲かる。だからマイナス情報を隠して契約を迫る
  3. 売主物件は質の低い仲介会社も取り扱える。競争が激しく押し売りも

それぞれ詳しく見ていきましょう。

尚、本コラムは不動産取引の仕組みを理解している方向けです。まずは以下の記事をご覧ください。

参考
どの不動産屋に行っても同じ物件を購入できる理由【不動産取引の仕組み】

続きを見る

 

①両手取引になるのは、一部の個人所有物件とほとんどの業者売主物件

【原則】片手取引は売主・買主、それぞれの仲介業者の合計4者が参加する

通常の取引では、売主と買主の間にそれぞれ売主側の不動産屋さん、買主側の不動産屋さんが入る構造になり、これを「片手取引」と言います。

売却依頼を受けた売主側の不動産屋さん(以下の図ではX社)とは別の不動産会社(以下の図ではB社)が、買主さんを見付けてくるパターンで、本来の原則的な取引形態です。

 

最終的には以下の通り、売主側・買主側でそれぞれの仲介業者が間に入ります。契約が決まればそれぞれの仲介業者が依頼元(売主または買主)から仲介手数料をもらいます。

 

両手取引は間に1社のみ。一部の中古物件と、新築戸建て・リノベ物件が対象

一方で両手取引とは、売主と買主との間に不動産屋が1社しか入らない取引です。

これには売主が個人か業者(不動産会社)かによっ以下の通りて2パターンに分けられます。

結論から言えば、両手取引となる主な物件は、一部の「中古物件」(個人所有)と、ほとんどの「新築戸建て」「リノベーション物件」(業者所有)です。

 

【パターン1】自宅(中古物件)の売却依頼を受けた不動産屋が、買主も見つけるケース

売主が個人の場合、自宅(中古物件)の売却依頼を不動産屋にお願いします。

依頼を受けた不動産屋(元付仲介業者)は、物件データベースREINS(レインズ)へ物件登録します。これにより、新規の売り物件がでたことを他社の不動産会社に一斉に周知でき、他の不動産会社も買主を探すように動いてくれます。

一方で、売主側の不動産屋(元付仲介業者)自身でも買主を探そうと動きます。

結果、売主から売却依頼を受けた仲介業者が、買主さんも見つけた場合、不動産屋1社で売主さんと買主さんの両方を見付けてきたことになり、間に入る会社が1社のみとなります(両手仲介)。

以下の図で言えば、物件を売主さんから預かったX社が、その他の不動産屋(A社・B社・C社)と同じく買主さんに物件紹介し、その結果、買主さんがX社を選んでいます。

 

結果のみシンプルに書き直すと、下の図のようになり、買主さんと売主さんの双方から不動産取引の依頼を受けた形になります。

 

【パターン2】売主が自社所有物件(新築戸建てやリノベ物件)をREINSに登録するケース

両手取引になるもう一つのパターンは、宅建業の免許を持つ不動産会社が、自社で所有している物件を売りに出すケースです。

不動産屋自身が売主なので、他の不動産会社に売却依頼しなくても、自社で物件データベースREINS(レインズ)に登録できます。売主自身が不動産屋なので、一般的には特定の仲介会社に売却依頼をしません。

レインズに登録することで「仲介業者さん、買主さんを見つけてきて連絡くださいね」と全国の仲介業者向けにメッセージを送ることになります。

このREINSをチェックした全国の不動産屋(客付仲介業者)が、買主さんを見付けようと営業活動をします。

結果、どこかの不動産屋が買主さんを見付けた場合、不動産屋1社で売主(不動産会社)と買主(個人)をみつけたことになり、間に入る仲介業者は1社になります(両手仲介)。

 

これもシンプルに結果だけ示すと、以下の図のようになります。売主が仲介業者(不動産屋)に直接的には売却依頼をしない取引なので、必然的に両手取引となります。

 

以上より、両手取引となる可能性がある物件は、個人売主の中古物件と業者売主の新築戸建て・リノベ物件ということが分かります。

尚、新築戸建てやリノベ物件は、基本的に不動産会社が所有者です。REINSに売主自身が登録する物件であり、業界用語で「売主物件」とも呼ばれます。

参考

新築戸建てやリノベ物件は売主が不動産会社である場合がほとんどです。ですので、新築戸建てやリノベ物件の多くは両手取引になることが多いです。

しかし、必ず両手取引となるわけでもありません。新築戸建てやリノベ物件でも、売主(不動産会社)が特定の仲介業者に売却を依頼することがあります。この場合には、片手取引になることがあります。

少しややこしいところがありますが、「基本的に、売主が業者の新築戸建てやリノベ物件は両手取引になりやすい」と覚えておきましょう。

 

②両手取引は報酬2倍で儲かる。だからマイナス情報を隠して契約を迫る

売主からも買主からも依頼される不動産業者は、双方から報酬を受け取れる

以上の両手取引の仕組みを理解した上で、両手取引の特徴を見ていきましょう。

まず、片手取引の場合には、仲介手数料はそれぞれ依頼した不動産会社へ支払います。つまり、売主は売主側の不動産会社へ、買主は買主側の不動産会社へ支払います。

両手仲介の場合にも同様で、仲介手数料は依頼した不動産会社へ支払います。

しかし、売主と買主の間に1社しか仲介会社はいないので、この不動産屋は売主さんからも買主さんからも仲介手数料を受け取れます。

片手取引の場合に比べて、両手取引の場合は仲介報酬が2倍になるという「儲かる取引」なのです。

参考

両手取引は売主と買主の両方の間に入るため、民法が禁じる双方代理ではないか?という疑問がわきます。

この点、仲介業者は売主または買主を「代理」するものではなく、あくまでも「媒介」であるため双方代理にあたらず、違法ではないと一般に解釈されています。

利益の相反する売主と買主の間に1社しか入らないため、公平に条件調整する立場ということになります。しかし実際にはどちらかが損をすることになりやすい取引構造であり、米国では多くの州で禁止されています。

 

ネガティブ情報を隠したり建物調査を断るなど、とにかく契約を迫ってくる

両手取引は儲かる取引であることが分かりました。

ならば「決まれば2倍の報酬を得られるこの取引、何としても契約を成立させたい!」と思うのが営業マンというものです。

そうなると、例えば以下のような不利な条件で強引に契約を迫ってくる仲介業者もでてくる可能性があるので要注意です。

  • ネガティブな情報を隠す。物件調査などにも協力的でない
  • 売主と条件交渉しにくい。売主に有利な内容で契約を迫る

これらの不健全な取引は、不動産会社の姿勢次第で片手取引でも起こり得ることも多く含みます。

しかし、両手取引の場合には特に利益が大きいため、通常よりもさらに強引な取引になりがちであることに注意が必要なのです。それぞれ見ていきましょう。

 

ネガティブな情報を隠す。物件調査などにも協力的でない

報酬が2倍になる“おいしい”取引。ならば契約から遠のくことはしたくないと考えてしまいます。

そうすると、マイナス情報やリスク情報など買主さんが「買うのをやめようかな…」と思ってしまうようなネガティブな情報を隠すことがあります。または、聞かれない限り言わずに黙っておくのです。

また、買主が建物調査(インスペクション)をしたいと思っても協力的でないことがあります。

調査することで悪材料がでてきたら契約がなくなる懸念や、そもそも調査に時間がかかり、他の買主さんに物件を取られてしまう恐れがあるためです。

その他、極力契約が遠のくことはしてくれないことがあり、「気にすることないですよ」「他の方に取られちゃいますよ」ととにかく契約を急かすことがあります。

 

売主と条件交渉しにくい。売主に有利な内容で契約を迫る

両手取引は売主と条件交渉しにくい場合もあります。

片手取引であれば、売主側・買主側でそれぞれ仲介会社が分かれています。買主は買主側の仲介業屋に要望を伝えれば、売主側の仲介業者と業者同士条件交渉をしてくれることが期待できます。

しかし両手取引は間に1社しか存在しません。しかも契約をまとめにかかりたいインセンティブがあります。

買主さんから条件交渉、例えば実際には相場より高く売り出されているため値下げを仲介業者にお願いしても、「これは適正水準の価格ですので下げられません」とうまく丸め込まれるケースがあります。

状況にもよりますが、売主に有利な条件で契約がまとまることもあります。

個人売主から売却依頼を受けた仲介業者は、やはり売主との関係性を優先してしまう側面があります。

売主が不動産会社の売主物件の場合には、今後も同じ会社が新築戸建てやリノベ物件の売却を繰り返すことが多いです。

今後の付き合いを考えた時、あまり売主業者に厳しい条件交渉はできず、それよりも“一見さん”の買主にうまく話をして妥協してもらう方が得策と考てしまうのです。

 

③売主物件は質の低い仲介会社も取り扱える。競争が激しく押し売りも

新築戸建て・リノベ物件(売主物件)は両手取引になりやすい

両手取引には、もう一つの特徴があります。それは、新築戸建てやリノベ物件といった「売主物件」が両手取引になりやすいということです。

両手取引となり得る物件は、個人売主の【パターン1】と、業者売主の【パターン2】であることを上で確認しましたが、どちらが両手取引になりがちかといえば、圧倒的に【パターン2】なのです。

理由を考えてみましょう。

まず【パターン1】では、個人売主から売却依頼を受けた不動産屋(元付仲介業者)が物件データベースREINS(レインズ)に登録するため、他の不動産屋(以下ではA社・B社・C社)が買主をみつけてくると片手取引となります。

【パターン1】において両手取引となるのは、個人売主から売却依頼を受けた不動産屋(元付仲介業者)が自ら買主も見つけてくるケースです。

両手取引ができる業者が元付業者に限定されており、【パターン1】は両手取引とならない(片手取引となる)ケースも多いのです。

一方で、【パターン2】は不動産会社が売主であり、売主自身がREINS(レインズ)に物件登録できます。

そうすると、どの仲介業者(以下の図ではA社・B社・C社)でも買主をみつけたらそれは両手取引となってしまうのです。

売却依頼を受けた仲介業者(元付業者)が不在なので、売主と買主の間に入る仲介業者は1社になるのです。

新築戸建てやリノベ物件は基本的に不動産会社が売主(所有者)であるこの【パターン2】に属します。ですので、新築戸建てやリノベ物件は両手取引となりやすい物件なのです。

 

売主物件は、押し売りやレベルの低い仲介業者に特に要注意

新築戸建てやリノベ物件といった、不動産会社が売主となっている「売主物件」。

この売主物件(新築戸建てやリノベ物件)は両手取引になりやすく、上で述べた注意点に加え、さらに以下のような危険があるため特に要注意です。

  • 多くの仲介業者が売主物件を取り扱う。熾烈な競争があり押し売りも
  • 新築戸建てやリノベ物件は奇麗な物件で売りやすい。質の低い会社も多い

それぞれ見ていきましょう。

 

多くの仲介業者が売主物件を取り扱う。熾烈な競争があり押し売りも

売主物件は、新築戸建てビルダーやリノベーション再販業者など、不動産会社が売主です。

そのため上で見た通り、どの仲介業者が買主を見付けてきても両手仲介になるため、売主物件で儲けようとする仲介業者は多いのです。

新たな売主物件がでれば、仲介業者は一斉に買主を見つけようとします。

A社・B社・C社…と無数の仲介業者がいますが、この中で最も早く買主を見付けた仲介業者のみ仲介手数料をもらえます。だからとにかく契約を急ぎます。

時には押し売りのようになることもあります。

内覧に行けば物件のいいところだけを過度に強調し、その場で申込させるような営業手法も当たり前のように行われています。

 

新築戸建てやリノベ物件は奇麗な物件で売りやすい。質の低い会社も多い

売主物件は、新築戸建てやリノベ物件など“奇麗な物件”です。

仲介業者にとって、買主さんに「この物件素敵!」と思わせやすく、売りやすい物件でもあります。

売主が戸建てビルダーやリノベ再販業者など、不動産取引に慣れています。建築資料なども揃いやすく、不明点があれば売主に問い合わせることですぐ解決しやすい側面もあります。

つまり、業歴が短く、難しい取引に慣れていない仲介会社でも取り扱いしやすい物件です。レベルの低い仲介業者であっても、営業がしやすいのです。

その意味で、売主物件の両手取引には玉石混交の多くの不動産屋が群がる傾向にあるといえ、危険な取引になりがちな側面があるのです。

 

両手取引が悪いわけではない。信頼できる仲介業者を選ぶことが鍵

以上、両手取引の仕組みやそのリスクをご説明しました。

この記事では両手取引の負の側面にフォーカスして紹介しましたが、両手取引自体が悪いわけではありません。また、片手取引だからと言って安全なわけでもありません。

例えば、個人の売主から売却依頼を受けた仲介業者(元付仲介業者)しか買主をみつけられないケース、つまり、他の仲介業者(客付仲介業者)では買主をみつけてこれなかった場合には、両手取引とならざるを得ません。

報酬が2倍になることも、これはなにも悪いことではありませんし合理的な理由もあります。

1社で売主の対応も買主の対応も行います。当然、片手取引よりも業務が多くなり、元付業者でありながら客付業者としての手続きもすべて行わなければなりません。

前者は売主の開拓、重要事項説明書や売買契約書の作成、登記移転の手配などであり、後者は買主の開拓、収支計画やローンサポートといったファイナンス、保険の手配などがあります。

片手取引の場合でも、客付仲介業者が契約を強く迫るような営業を行うこともあります。

結局は、信頼できる不動産会社を通じて取引を行うことが最も重要なことであり、安全な取引の第一歩なのです。

 

まとめ

不動産取引において、買主と売主の間に1社の仲介業者しか入らない両手取引。

仲介業者の立場では、売主・買主双方から仲介手数料を取れる稼げる取引のため、場合によっては危険な取引になってしまうことがあります。

特に売主が不動産会社の場合、つまり新築戸建てやリノベ物件の売買では、両手仲介になりがちで十分な注意が必要です。

すべての取引が危ないわけではありませんが、ぜひとも信頼できる不動産屋さんをみつけて安全な取引を実現してください。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

加藤豊

1,000件以上の住宅取引をみてきた不動産エージェント。数多くの住宅相談を受けた経験から、住宅購入の落とし穴や失敗事例、資産価値の見極め方まで「家の買い方」を明快に発信!

-住宅購入の必須知識・ノウハウ

© 2020 agentnote.jp This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.